著:小川 糸
食事をめぐる短編集。
同じ作者だし、「食事」というテーマがあるし、似たような作品が多いのかな?と思った私が甘かった。
7作品ともテイストが全然違って、アンソロジーを読んでいる気分だった。
でも全体を通して、食事や食べ物のシーンの描写が素敵なのは同じ。
よく「食べる時の描写が官能的」という表現がされるけれど、この短編集の「親父のぶたばら飯」にも当てはまると思った。
食べるとは、人間の欲を満たしている瞬間だからか?
私の大好きな短編集、江國香織さんの「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」の中にある『うんとお腹をすかせてきてね』の食事の描写にも似ていて、繰り返し咀嚼したくなるような文章だった。
(『うんとお腹をすかせてきてね』、数年ぶりにまた読もう)
そして病床の祖母にかき氷を食べさせる「バーバのかき氷」も好き。
きっとこのかき氷は、薄白色でふわふわしてて、舌に乗せたらふわっと溶けるんだろうな。
小川糸さんの作品は文章が柔らかくて好き。
「食堂かたつむり」も素敵だったけれど、短編集の方が小川さんの文章が洗練されているのが感じられるような気がする。