人間以前

人間以前

フィリップ・K・ディック

 

 

気になっていた短編集2冊目。

今回の本はSFというより、モダン・ファンタジーの部類が多いようだった(そんなジャンルがあるとは、初めて知った)。

 

SFとは雰囲気が全く異なるので戸惑いがあったが、好きな作品もあった。

 

「妖精の王」

「この卑しい地上に」

「宇宙の死者」

「フォスター、お前はもう死んでるぞ」

 

 

「宇宙の死者」は設定が面白かった。

ガッツリSFではない雰囲気?

彼の長編の前ぶりになっているようなので(設定などが引き継がれているよう)、そちらも読んでみたい。

 

 

今回強く心に残ったのは「フォスター、お前はもう死んでるぞ」。

これが1955年に書かれたとは思えない。

2023年の現代でもこれは起こりうるし、今の日本もその方向に進んでいるのではないかと絶望する。

 

フィリップ自身がこの作品を書いたきっかけで

「政府」

と語っているが、全くその通り。

日本も「自立」「自己責任」という言葉を乱用していて、政府が人命の責任を取りたくないのは明白だ。

 

 

話の設定としては、戦争時に自分の命を守るためのシェルターや防衛航空機などの費用を個人で賄う時代。

シェルターを買える人、買えない人、常に最新の機能に踊らされる人、「生徒は皆シェルターを持っているはず」と想像力の乏しい教師。

 

主人公の男の子が政府や大人の都合に振り回される感じは、人事ではなかった。

 

 

しかしやっぱりSFらしい作品が読みたくなったので、次の本にも期待。