わたしたちは銀のフォークと薬を手にして
著:島本理生
グルメが描かれる小説が好きで、思わず手に取った1冊。
でも食事の描写というより、食事を取り巻く人間模様が描かれていて、とても良かった。
一緒に何を食べる関係性なのか、どんな時に何を食べたくなるのか。
登場人物も魅力的に描かれていて、皆それぞれ幸せにありますように、と願えるような内容だった。
主人公も好きだったけれど、その友人たちも好きだったな。
ちょっとフェミニズムの話に触れる部分もあって、考えさせられた。
「女」を利用される前にこちらが「女」を利用してやる、という意気込み。でもそれも疲弊する現実。
女性ライターの友人が、謎に女性アイドルに気に入られ、2人で急に旅行するシーンが好きだった。
そんなに仲良くない女性同士で旅行するのって、ありえなくもない。
全体は一つの物語だけれど、短編でまとまっていて、登場人物や時間の切り替えがすんなりできる。
文体もあっさりしていて、とても読みやすい。でも心情はしっかり伝わってくるから、物語にすんなり入り込めた。