知られざる皇室外交

知られざる皇室外交

著:西川恵

 

 

これも好きなブロガーさんが読んだと聞いて。

 

私は皇室に対して、とても大きな思い入れがある訳ではない。

それでも昔、小学生の時のとあるイベントで皇后さまをお見かけした際は、その柔らかな物腰の中にある、樫の木のような力強さに畏怖の念を抱いた。

バレエを見に行くとよく両陛下が鑑賞される場面があったが、観客に挨拶をしつつすぐお席について、お帰りになる際もサッと退出され、公演を邪魔しないようにとの配慮が心に響いた。

 

皇室が日本の象徴とされている中で、どれだけ心を砕いて各国との関係を築き上げられてきたのか。

皇室は政治に関与しない、となっているが、皇室の存在とその関わりが外交の礎になっていることは間違いない。

 

著者は本の中で、ことあるごとに「日本のマスメディアの国際感覚の欠如」について触れている。

日本が認識している以上に、世界の反日感情は根強く存在し、戦後の皇室はその反日感情をできる限り塗り替えられるよう、尽力されていたこと。

その部分は全く報道せず、皇室の方の「お人柄」だけを報道する姿勢に、かなり怒りを感じているのだろうな、という内容だった。

 

確かに、戦争によって生まれた反日感情は、時間が経ったからといって自然に消えるものではない。

ましてや、昭和天皇の戦争責任を背負い、皇太子として、そして平成天皇として公務にあたられていたそのお気持ちは、いかほどだろう。

 

ただ、著者の言うような皇室の役割を日本国民が意識し過ぎてしまうと、どうしても政治色が強まってしまう可能性もあると感じている。

今の日本の皇室は、現在のような形でこそ保たれている、ような気もする。

 

 

重い話ばかりではなく、宮中晩餐会の様子が詳しく知れるのも楽しい。

どんな食事が出されるのか、なぜこのメニューになったのか。

とても興味深く読んだ。

同じ著者の「エリゼ宮の食卓」も読んでみたい。