著:原田マハ
久々に原田さんの本。
ゴッホとその弟テオ、そして実在した日本人画商・林忠正と架空の人物・加納重吉の物語。
大筋がフィクションながらも、背景は歴史に忠実に基づいているため、まるで「事実」のように読めるし、ゴッホとテオの心情も細かく表現されていて、さすが原田さん。
これを読んだあとにゴッホの絵を見たら、印象が違うと思う。
美術館に足を運びたくなった。
そして19世紀後半のパリの美術界についての描写も印象深かった。
「印象派」という存在は知っていたけれど、その一派が出てくる前の美術界についてや、印象派たちの登場の背景などは勉強になった。
日本では全く価値のなかった浮世絵を「ジャポニズム」の波に乗せてフランスで販売したことに対して揶揄されたが、その背景もよく描かれている。
日本人は「良いと言われているものを良しとする」民族だということ。そのためには、フランスやイギリスで浮世絵の評価を高めなければ、日本人は浮世絵を美術品として認めないだろう、ということ。
もちろん商才あってのことだろうが、誰よりも日本美術の行方を案じていたのは林なのだろうな、と感じることができた。
同じ原田さんの作品でゴッホを扱っている「リボルバー」も読んでみたい。