色彩の息子

色彩の息子

著:山田詠美

 

 

 

色にまつわる12編の短編集。

素敵なコンセプトだったけど、ストーリー的にはそこまで好みではなかった。

基本的に男女の少しドロドロとした展開が多くて、エロティックな描写が多い。

山田さんの、直接的ではないのに”そう”としか感じられない絶妙な表現が好きな身としては、ちょっと違ったかなーという印象。

 

でも

白熱電球の嘘」

「黒子の刻印」

は好きだった。

 

特に「黒子の刻印」は、人の劣等感が具現化されると、なるほどこういったものになるのかも、と感じた。

劣等感を感じつつ、それを乗り越えて幸せを手にしたのに、結局劣等感からそれを失う羽目になる。

 

「悔しい」とか「いいな」とか、人を羨む気持ちは力にもなるけれど、自分の足枷にもなるなと感じた。

 

とえいえこの本の素敵なところはその体裁。

それぞれの短編のテーマになっている色彩の”紙”が要所に挟み込んである。

しかもその色合いは絶妙だし、その色や短編の雰囲気を表す紙質を選んである。

文庫本なのになんて豪華。

 

紙の本が貴重になっていくからこそ、装丁や体裁にこだわっている本が欲しい。

値段はそれなりに上がるだろうけれど、そもそも本の値段が上がっているし。それならより素敵なものが欲しいと思う今日この頃。