あのね 子どものつぶやき

あのね 子どものつぶやき

編:朝日新聞出版

 

 

朝日新聞生活面のコラムに掲載された子どものつぶやきを集めた1冊。

本当に一言ずつなので、一気に読んでしまった。

 

クスッと笑えるものだったり、ちょっと辛辣だったり、

その考え方はなかった!と思うものだったり。

大人になると忘れてしまいがちな気持ちや感覚を思い出せる本だった。

 

私が気に入ったのは以下の一言。

 

 

お風呂で一人、頭を洗いながら独り言。

「妹は、いつまでたっても妹……」

 

 

真理である。

そして、当たり前だけど、不思議なことである。

 

私も子どもの一言はちゃんと書き留めておかなくては。

グリーンピースの秘密

グリーンピースの秘密

著:小川糸

 

 

 

作家の小川糸さんのベルリンでの生活日記。

本当に個人的な日記のようで、日常のこと、その日の気分が脈略もなくつらつらと書かれていて、面白い。

 

小川さんは料理が好きとのことで、料理や食材の描写が素敵。

そしてやはりそこにはドイツらしさがうかがえる。

 

タイトルにもあるグリーンピースも出てくるが、実は本の中に一番出てくるのはアスパラガス。

アスパラガスを焼いて、ドイツの薄いハムを乗せて食べるのが極上とのこと。

あーー食べたい。

 

あとはリトアニア修道院ホテル(実際の修道院に泊まれるそう)の食事がとても美味しそうだった。

 

日本人とドイツ人は性質が似てると言われるけれど、当然ながら違う面もたくさんあり、面白かった。

特に、「ドイツ人は窓をピカピカに拭く」など。

日本人も綺麗好きが多いかなと思うけれど、窓をそこまで意識している人は少ないのでは。

 

 

小川さんが最近読んだ本の話も書いてあって、それも併せて読みたくなる。

もう1冊、続きのエッセイを購入済みなので、読むのが楽しみ。

知られざる皇室外交

知られざる皇室外交

著:西川恵

 

 

これも好きなブロガーさんが読んだと聞いて。

 

私は皇室に対して、とても大きな思い入れがある訳ではない。

それでも昔、小学生の時のとあるイベントで皇后さまをお見かけした際は、その柔らかな物腰の中にある、樫の木のような力強さに畏怖の念を抱いた。

バレエを見に行くとよく両陛下が鑑賞される場面があったが、観客に挨拶をしつつすぐお席について、お帰りになる際もサッと退出され、公演を邪魔しないようにとの配慮が心に響いた。

 

皇室が日本の象徴とされている中で、どれだけ心を砕いて各国との関係を築き上げられてきたのか。

皇室は政治に関与しない、となっているが、皇室の存在とその関わりが外交の礎になっていることは間違いない。

 

著者は本の中で、ことあるごとに「日本のマスメディアの国際感覚の欠如」について触れている。

日本が認識している以上に、世界の反日感情は根強く存在し、戦後の皇室はその反日感情をできる限り塗り替えられるよう、尽力されていたこと。

その部分は全く報道せず、皇室の方の「お人柄」だけを報道する姿勢に、かなり怒りを感じているのだろうな、という内容だった。

 

確かに、戦争によって生まれた反日感情は、時間が経ったからといって自然に消えるものではない。

ましてや、昭和天皇の戦争責任を背負い、皇太子として、そして平成天皇として公務にあたられていたそのお気持ちは、いかほどだろう。

 

ただ、著者の言うような皇室の役割を日本国民が意識し過ぎてしまうと、どうしても政治色が強まってしまう可能性もあると感じている。

今の日本の皇室は、現在のような形でこそ保たれている、ような気もする。

 

 

重い話ばかりではなく、宮中晩餐会の様子が詳しく知れるのも楽しい。

どんな食事が出されるのか、なぜこのメニューになったのか。

とても興味深く読んだ。

同じ著者の「エリゼ宮の食卓」も読んでみたい。

わたしたちは銀のフォークと薬を手にして

わたしたちは銀のフォークと薬を手にして

著:島本理生

 

 

 

グルメが描かれる小説が好きで、思わず手に取った1冊。

でも食事の描写というより、食事を取り巻く人間模様が描かれていて、とても良かった。

一緒に何を食べる関係性なのか、どんな時に何を食べたくなるのか。

 

登場人物も魅力的に描かれていて、皆それぞれ幸せにありますように、と願えるような内容だった。

 

主人公も好きだったけれど、その友人たちも好きだったな。

ちょっとフェミニズムの話に触れる部分もあって、考えさせられた。

「女」を利用される前にこちらが「女」を利用してやる、という意気込み。でもそれも疲弊する現実。

女性ライターの友人が、謎に女性アイドルに気に入られ、2人で急に旅行するシーンが好きだった。

そんなに仲良くない女性同士で旅行するのって、ありえなくもない。

 

全体は一つの物語だけれど、短編でまとまっていて、登場人物や時間の切り替えがすんなりできる。

文体もあっさりしていて、とても読みやすい。でも心情はしっかり伝わってくるから、物語にすんなり入り込めた。

 

 

 

一寸先の闇

一寸先の闇

澤村伊智 怪談掌編集

著:澤村伊智

 

 

SNSで見かけて気になった一冊。

ちょっと不気味なショートストーリーが詰まった本だった。

 

澤村さんの作品は「ホラーエンタテインメント」と評されているようで、どれもサクッと読めた。

(小学生向けに発行されている「5分で読める〜」シリーズにも入っているようで、確かにショートショートは子どもでも読みやすそう)

 

この中で好きだったのは「さきのばし」。

こうだろうな、と思う展開を何回も越えてきて、笑ってしまった。でも結末はもちろん後味が悪い。

 

 

全体的なテイストは正直私の好みではなかったが、長編は少し気になっている。映画化されている「ぼぎわんが、来る」を読んでみようか。

たゆたえども沈まず

たゆたえども沈まず

著:原田マハ

 

 

 

久々に原田さんの本。

ゴッホとその弟テオ、そして実在した日本人画商・林忠正と架空の人物・加納重吉の物語。

 

大筋がフィクションながらも、背景は歴史に忠実に基づいているため、まるで「事実」のように読めるし、ゴッホとテオの心情も細かく表現されていて、さすが原田さん。

 

これを読んだあとにゴッホの絵を見たら、印象が違うと思う。

美術館に足を運びたくなった。

 

そして19世紀後半のパリの美術界についての描写も印象深かった。

印象派」という存在は知っていたけれど、その一派が出てくる前の美術界についてや、印象派たちの登場の背景などは勉強になった。

 

そして林忠正が「国賊」と呼ばれたこと。

日本では全く価値のなかった浮世絵を「ジャポニズム」の波に乗せてフランスで販売したことに対して揶揄されたが、その背景もよく描かれている。

日本人は「良いと言われているものを良しとする」民族だということ。そのためには、フランスやイギリスで浮世絵の評価を高めなければ、日本人は浮世絵を美術品として認めないだろう、ということ。

 

もちろん商才あってのことだろうが、誰よりも日本美術の行方を案じていたのは林なのだろうな、と感じることができた。

 

同じ原田さんの作品でゴッホを扱っている「リボルバー」も読んでみたい。

 

プリンセスメゾン

プリンセスメゾン

著:池辺 葵

 

 

前からアプリでチラッと読んだことのあった漫画。

完結していたので、改めてじっくり読んでみた。

 

池辺さんの漫画は独特の空気が流れていて、読むと違う世界に引き込まれるよう。

セリフは極端に少ないし、背景の描き込みもそこまで多くないけれど、その細い線の一本一本に意思や迷いや喜びや悲しみが詰まっていて、魅力的。

 

本当はちゃんと買って手元に置いておきたい。

 

この漫画は、家を買う目標を持った女性とそれを取り巻く人々の話。

 

家を買うとは。人生とは。

当たり前だけれど、一人ひとりに人生があるよな、と考えさせられる。

 

 

お気に入りのセリフを一つ。

人のことを羨んで卑屈になっていた友人に向けての一言。

 

 

「羨んでいたって

 その人の幸福を

 願うことはできます」

 

 

 

 

確かに、とちょっと気が楽になった。

そうだな。羨んでも、それが憎しみにさえならなければ良いな、と思えた。